間違った歯の手入れ

テレビ朝日2008年11月11日たけしの本当は怖い家庭の医学「間違った歯の手入れスペシャル」より

歯磨き.jp

間違った歯の手入れ

テレビ朝日2008年11月11日たけしの本当は怖い家庭の医学「間違った歯の手入れスペシャル」では、
良かれと思ってしている間違えた歯磨きによって「知覚過敏」「歯髄炎」になることがあるということ等、
身近なテーマが取り上げられていました。
そもそも正しい歯の磨き方とは?歯磨き粉の量は?・・・知らないことは意外とあります。

間違った歯磨きで歯が削れる!?

まずは、症例を元に作成されたとする恐怖の物語から。
主人公はAさん、43歳女性。
歯にコンプレックスを持っています。

知人が歯のホワイトニングに興味があることを知って、
自分でも、徹底した歯の手入れを始めることにしました。

何か食べるたびに、こまめに歯磨きをして、
今までの歯磨きプラス、
歯が白くなるという歯磨き粉でも歯を磨くようになりました。

コーヒーや紅茶を飲んだらすぐに歯磨き。
歯の色だけではなく口臭も気になりだし、
においの強い食べ物の後は特に念入りに歯を磨きました。

わずか2週間で歯ブラシをだめにするほど、
強めの歯磨きを続けたのです。

そして、その年の冬。
小さな異変が現れ始めました。
水を一口飲んだ瞬間・・・

症状その1「水が歯にしみる」

冷たい水を飲んだとき、
歯がキーンとしみたのです。
ほんの一瞬のことでしたが、
こんなことは初めてでした。

そして、別の日・・・

症状その2「冷たい空気が歯にしみる」

冬の寒い空気をスーっと吸い込もうとしたときに、
歯がキーンとしみたのです。

おかしい・・・と感じ、
その晩、虫歯を恐れつつ食事をするものの、
どうも虫歯ではない様子。

そこでこんどは、歯茎もきちんと磨くように。
するとしばらく経ち・・・
・時々のペースで冷たい水がしみるようになった。
・しみる時間が長くなってきた。

自分の歯を鏡で見てみると・・・

症状その3「歯と歯茎の間が黄色くなる」

歯の根元部分に黄色くなっている箇所があり、
その黄色い部分を歯の汚れだと思い込み、
さらに力強く歯磨きをするようにしました。
しかし、これが恐ろしい結末を招くことになったのです。

ある日、朝から・・・

症状その4「歯の脈打つような痛み」

ズキン、ズキンと朝から歯が痛みます。
友人とのランチ。冷たい水を避けて温かいコーヒーを頼むのですが・・・

症状その5「温かい飲み物で激痛」

コーヒーを口に含んだとたん、
激痛が走りました。
これはおかしい・・・
Aさんはその足で歯科医を受診。
すると、医師から意外な事実が告げられます・・・

「炎症が広がっています。
壊死する前に、神経を抜くしかありませんね。」

歯を蝕む病の正体。
それは、
病名【歯髄炎(しずいえん)

歯髄炎とは、外部からの刺激や雑菌等の進入が原因で、
神経と血管が通っている歯髄に炎症が起き、激痛が走る病です。

参考:歯髄炎の画像(多数症例写真)がある外部リンク(河田歯科医院)

いったんこの病にかかると、
歯髄の中で炎症が広がり組織が腫上がろうとします。

しかし、歯髄は象牙質に囲まれているため、
神経を圧迫することになります。
そのため、ズキンズキンとした激痛が走るのです。

さらに症状が進むと、
血管が収縮し、組織に酸素が運ばれなくなり、
ついには歯髄が壊死してしまうこともあります。

厚生労働省の調べによると、
歯髄炎の患者数は、年間約66万人。

歯髄炎の最も多い原因は虫歯。
しかしAさんは虫歯ではありません。
原因は・・・「間違ったブラッシング」にありました。

きれいにしようとするあまり、
2週間で歯ブラシがだめになるほど力を入れたブラッシング。
しかも、1日に何回も強いブラッシングを続けてきてしまったのです。

歯の外側のエナメル質は硬いために、
歯磨き程度では簡単には削れません。
しかし、間違ったブラッシングにより、
歯茎に炎症が起き、歯茎が下がり始めてしまったのです。

その結果、歯と歯茎の境目の象牙質がむき出しになってしまい、
黄色い部分の象牙質をAさんは汚れだと勘違いして対処を誤ることに。

そしてその象牙質の露出で招いた病が、
知覚過敏
だったのです。

参考:知覚過敏のイラストがある外部リンク(おかもと歯科)

これにより、冷たい水を飲んだだけで
歯がしみるようになってしまい、
Aさんはそこでさらに強く磨き続けてしまった。

象牙質は、エナメル質に比べて柔らかい組織のため、
歯磨きでも削り取られてしまうものなのです。

こうなると、歯髄に刺激がより伝わりやすくなって炎症が発生。
そして、脈打つような痛み・・・ついに歯髄炎を発症。

その後、歯科医で適切な治療を受け、
歯髄炎も知覚過敏も治まったAさん。

再び知覚過敏が起きないよう、
1日3回、歯を1本ずつ丁寧に磨くようになりました。

※「歯を白くする」に関するサイト内ページ
歯磨き以外で歯を白くする方法とは?

4人に1人が知覚過敏

現在、日本人の4人に1人が知覚過敏だといわれ、
20代から50代に多く発症するといわれています。
だからこそ、知覚過敏は歯髄炎等になる前に、
早期に治療することが大切・・・と番組は警告します。
なお、「歯茎は加齢によっても下がることがある」とのことです。

本当に正しい歯の磨き方

番組の後半、虫歯の治療・研究の第一人者
日野浦歯科医院院長、日野浦光先生
によると、正しい歯磨きのポイントは次の3点。

1・・・歯ブラシを軽く持つために一番重要なのは持ち方で、
グーの持ち方だとどうしても力が入ってしまうので、鉛筆を持つように軽く持つ。
2・・・歯の表面に対して毛先を垂直にあてる。
3・・・横に数ミリほどの幅で振動させる

これで歯周ポケットを磨くことができる。
歯周ポケットは、歯垢が最もたまりやすい部分。
歯にブラシを垂直に当てることで、毛先が自然に歯周ポケットに入り込み、
歯垢を効果的に掻き出すことができる。
しかし、このとき力を入れすぎると歯周ポケットの中や
歯茎を傷つける恐れがあるので注意。

歯ブラシの硬さはどれくらいがいい?

歯周病の人や歯周病の治療をした後の方は柔らかめの毛先を選ぶとよい。
たばこのヤニ等の汚れを落としたりスッキリしたい方は硬めがよい。
通常は普通の硬さで問題ない。

歯磨き粉の量はどれくらいがいい?

歯ブラシの横幅程度。
歯磨き粉は、少量でも十分に効果がある。
歯磨き粉を大量につけて強く磨くと、
中には研磨剤が入っていることもあるため、
長年磨き続けると、歯の表面が削れてしまうこともある。

歯磨き後の口のゆすぎ方は?

歯磨き粉には薬効成分が含まれているものもある。
フッ素であるとか、歯磨き粉の薬効成分は歯の再石灰化を促したり、
虫歯の進行を抑制する働きがある。
できるだけ口の中にとどまっている方がいいので、
歯磨き後の口のゆすぎ方は、
1回唾液を出し、1回程度ゆすぐくらいでいい。

知らないと危険!間違った歯の常識

最後に、次の3つのQ&Aの解説です。
人によっては「常識だと思っていたのに!」ということもあるかもしれません。

1.虫歯は人から感染する?

正解は「感染する」です。
そもそも虫歯は感染症の1つ。
生まれて間もない赤ちゃんには虫歯菌はいません。
母親や周囲の大人から唾液を介して感染するのです。

こうした感染により、
日本人の9割が虫歯菌の一つ、
ミュータンス菌を持っていると言われています。

参考:虫歯菌(ミュータンス菌)の画像(電子顕微鏡写真)がある外部リンク(浅野歯科医院)

※ただし、唾液の中には人間にとって必要な常在菌もあるため、
口うつしが悪いと言うわけではない。
母親の虫歯菌をなるべく減らすことが大切。
大人同士も虫歯菌だけでなく歯周病菌も感染すると考えられる。

2.歯石がすぐにできる人は虫歯になりやすい?

正解は「虫歯になりにくい」です。

そもそも虫歯は、虫歯菌が糖分を栄養にして酸を作り出し、
歯のカルシウムを溶かすことでできます。

そんな酸の攻撃と戦っているのが唾液。
通常1日2~5リットルほども分泌される唾液が
カルシウムが溶け出してしまった歯にカルシウムを供給して元に戻してくれる。
これが【再石灰化】です。

参考:再石灰化の画像(顕微鏡写真)がある外部リンク(りんかビル歯科)

この作用は、歯垢と呼ばれる細菌の塊までも固めてしまうのです。
これが【歯石】の正体です。

※だ液による歯の再石灰化に関するサイト内ページ
驚きの『だ液』パワー
むし歯の始まり唾液が修復

歯石ができやすい体質の人は、再石灰化作用が高く、
虫歯になりにくいと言われています。
ただ、歯石があると歯周病のリスクが高まるので、
歯周病で歯が抜けてしまうということも・・・

では、歯石はどうやって取るか?

これは、自分でとることはほとんど不可能なので、
歯科医院で取ってもらうことになります。

3.歯が白くなってきたのは、歯がきれいになってきた証?

正解は「むしろ歯に白い部分が現れたら要注意」です。

白くなってきた部分はれっきとした虫歯です。
そもそも虫歯の始まりは、エナメル質の表面ではなく、その内部にできます。

エナメル質は、カルシウムの柱が集まったもの。
そのため、虫歯菌が出した酸がすき間から中に入り込み、
その内部を溶かしていくことで虫歯が始まります。

つまり、白い部分は虫歯の初期状態。
このように、初期の虫歯ができると光が屈折し、
表面から見ると白くくすんで見えるのです。

さらにその歯を放っておくと、
表面にまで穴が開き、進行して黒く見える虫歯になるのです。
(いわゆる私たちの知る虫歯)

初期の虫歯=ホワイトスポット

といいますが、
初期虫歯が必ずしも白く見えるのではなく、
虫歯の見える部位によっては白く見えないこともあります。
初期虫歯は歯科医師でも見た目ではわからないこともあるのです。

そこで、隠れ虫歯を見つける最新の検査機器が
「歯面状態認識装置(しめんじょうたいにんしきそうち)」

参考:歯面状態認識装置の写真と検査のイラストがある外部リンク(Dr.天野の歯槽膿漏の歯科治療室)

歯にレーザー光をあてるだけで表面からはわからない歯の中の空洞、
つまり、虫歯菌に侵(おか)された所があるかどうかがたちどころにわかるのです。

では、初期虫歯の治療は?

見た目にも黒くなり歯を削る治療が必要な通常の虫歯の場合、
キーンという不快音を出す治療となるのですが、
初期虫歯の場合には歯を削る治療は必要なく、
カルシウムの多いペースト等を歯に塗り、
再石灰化を促すことで、歯を元に戻すことが可能です。

最後に、検査のため歯医者に行く頻度は、
インプラント等をされている方は1ヶ月に1回、
通常は半年に1度くらいで歯のチェックをするのがいいとのことです。